原子力防災用語集
IAEA
(「国際原子力機関」の項を参照願います。) アルファ(α)線
放射線の一種で、ヘリウムの原子核。物質を通りぬける力は弱く、薄い紙一枚程度で止められる。 イエローケーキ
ウラン鉱石の粗製錬工程で作られるウラン酸化物の通称。黄色の粉末で一見してケーキのように見えるのでこの名称がある。黄色の粉末でウランの純度は40~80%。 インターナルポンプ
原子炉圧力容器の外に設置されていた冷却材再循環ポンプを、圧力容器に内蔵したもの。この結果、再循環ポンプと圧力容器をつなぐ配管が不要となった。柏崎刈羽原子力発電所6,7号機で採用されている。 インターロック・システム(interlock-System)
誤った操作によるトラブルを防止するシステム。たとえば、運転員が誤って制御棒を引き抜こうとしても、制御棒の引き抜きができないようになっている。 宇宙線
宇宙から非常に速い速度で地球に飛びこんでくる放射線。人は地上で1年間に平均約0.39ミリシーベルト受けている。 ウラン(ウラニウム)
記号はU。原子番号92。天然に存在するものは質量数234、235、238。天然に存在する元素の中でもっとも重い。ウラン235は熱中性子を吸収して核分裂を起こしやすい。 ウラン濃縮
濃縮とは2種以上の同位体で構成されている物質から、一方の同位体の存在比を高めることをいう。自然界にあるウラン鉱石から分離したウラン元素には、中性子を吸収して核分裂をするウラン235が0.7%程度しか含まれていないため、天然ウランでは核分裂の連鎖反応を起こしにくい。そのため軽水炉では効率よく核分裂を起こさせるために、ウラン235の割合を3~5%まで高めることが必要になる。 エックス(X)線
ラジオの電波などと同じ電磁波の一種で、波長が数十nmから0.01nm程度のもの。ガンマ(γ)線より物質を透過する力が弱い。病院での診断などによく使われている。 遠心分離法
ウラン濃縮に用いられる方法の一種で、分子量の異なったものに回転により遠心力を与えると、分子量の多いものほど外側に分布する性質を利用し、ウラン235とウラン238を分離させる。ガス拡散法よりも濃縮効果は優れている。 応力腐食割れ(SCC : Stress Corrosion Cracking)
破断させる力よりも弱い力を受けていても、材料が腐食環境下で割れを起こす現象をいう。材料の性質、材料に加わる力及び材料の使用環境の3つが特定の条件となったとき発生する。 温排水
火力発電や原子力発電では、タービンを回し終えた蒸気を復水器で冷却して凝縮させる。この復水器の冷却水として、わが国では海水が使用されている。復水器出口の海水は入口の海水より温度が約7℃上昇するので温排水と呼ばれている。
加圧水型原子炉(PWR : Pressurized Water Reactor)
軽水炉のうち、炉内で圧力を高くし冷却水を直接沸騰させない形式をいう。この形式では、タービンに供給する蒸気を発生させるために蒸気発生器を必要とする。1次系と2次系が分離されているので、水蒸気は放射能を含まない点が沸騰水型原子炉(BWR)と異なる。 ガイガー・ミュラーカウンター(GM計数管)
放射線による気体の電離作用を利用して、ガンマ(γ)線、ベータ(β)線の検出測定に用いられる代表的な放射線検出器。 外部被ばく
身体の外にある放射性物質から放射線を受けることをいう。一般の人の受ける外部被ばくとしては、宇宙線、大地の中の放射性物質などからの放射線があり、X線による診断も含まれる。 確認可採埋蔵量
現在の技術・経済条件の下で取り出すことができると確認できる資源の量。確認可採埋蔵量をその年の資源の年間生産量で割ると可採年数になる(ウランについては、年間需要量で割っている)。 核燃料(原子燃料)
原子炉の燃料として使うウラン、プルトニウムなどの核分裂性物質等をいう。また、これらを含む天然ウラン、濃縮ウラン及びプルトニウムの混合物も核燃料と呼ばれる。 核燃料(原子燃料)サイクル
原子炉の燃料となるウランは、鉱山で採掘された後、原子炉で使用されるまでに、様々な化学的、機械的加工が行われる。また、原子炉で使用された後も再処理することにより、核分裂性物質を抽出し、これを再び核燃料として利用する。このような一連の循環過程を核燃料(原子燃料)サイクルという。 核分裂(原子核分裂)
核反応の一種。ウランやプルトニウムなどの重い原子核が複数の原子核に分裂する現象。通常、ガンマ線等の放射線や中性子の放出を伴う。 核分裂生成物(略称 FP : Fission Products)
ウランやプルトニウムの核分裂によって生ずる核種の総称で、これらの原子核の多くはウランやプルトニウムの半分くらいの重さをもち放射性である。平均3回程度のベータ壊変やガンマ壊変を経て安定な核種になる。 核分裂性物質
ウラン235、プルトニウム239などのように、その原子核に中性子がぶつかると核分裂する性質の物質をいう。低速中性子で効率よく核分裂し、天然に存在する元素はウラン235のみで、人工のものとしてはウラン233、プルトニウム239などがある。 核分裂連鎖反応
核分裂によって放出された中性子が別の核分裂を起こし、中性子を放出し、またつぎの核分裂を起こさせるというように、連鎖的に核分裂を起こす現象をいう。 核融合
原子核反応の一種で水素、重水素、トリチウムなどの軽い原子核が核反応の結果、より重い原子核になる現象。反応前と後では質量和は反応前の方が大きく、その差がエネルギーとして放出される。この反応を利用して、エネルギーを取り出そうとするのが、核融合炉の考え方である。 確率論的安全評価
原子力施設等で起こり得るさまざまな事故・故障などについて、その発生の確率も考慮して安全性を評価すること。その発生頻度とその事故・故障の影響の大きさを定量評価し、その積である「リスク(危険度)」がどれ程小さいかで安全性の度合いを表現する。 ガス拡散法
ウラン濃縮に用いられる方法の一種で、分子量の異なったガスが、細かい穴のある多孔質の隔膜を通る際の速度が異なることを利用して同位体の分離を行う方法。 ガス冷却炉(GCR : Gas Cooled Reactor)
炭酸ガス、ヘリウムなどの気体を冷却材に用いる原子炉の総称。天然ウランを燃料とし、黒鉛を減速材、炭酸ガスを冷却材として使用する、イギリスで開発されたコールダーホール型原子炉は代表的なものである。 活性炭式希ガスホールドアップ装置(活性炭吸着装置)
原子力発電所の排気中の放射能を減衰させるための装置。活性炭がつめられたタンクの中に排気を通すと、放射性のキセノンが吸着して長時間滞留し、時間とともに、放射性物質の濃度が低下する。 ガラス固化
核分裂生成物などをガラスの中に溶かし込んで固めること(色ガラスが色素を溶かし込んでいるのと同じこと)で、固化したものは非常に安定した物質となる。使用済燃料の再処理の過程で発生する高レベル放射性廃棄物はこの方法で固化される。 ガンマ(γ)線
原子核から出る電磁波。ガンマ(γ)線は物質を透過する力がアルファ(α)線やベータ(β)線に比べて強い。原子力発電所では、2~4メートルの厚さのコンクリートで原子炉を囲い、外へ出さないようにしてある。 管理区域(放射線管理区域)
原子炉格納容器内、使用済燃料の貯蔵施設、放射性廃棄物の廃棄施設などの場所で、外部放射線、空気中、水中の放射性物質濃度や放射性物質によって汚染された物の表面の放射性物質の濃度が定められた値を超えるおそれのある区域をいう。この区域内は、特に放射線の管理が厳重に行われる。 希ガス(貴ガス)
周期律18族のヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)、ラドン(Rn)の6元素を総称する。この6元素は大気中の存在量が非常に少ないので希ガスと呼ばれる。この元素は非常に安定で、他の元素と容易に化合しない性質をもつ。原子炉内では核分裂生成物として放射性のクリプトン、キセノン、アルゴンなどが生まれる。 気水分離器
沸騰水型炉(BWR)で、蒸気中に含まれる凝結水を取り除く装置。炉心で発生した蒸気は大量の吹き上げ水と交じり合っていて、そのままでは蒸気タービンに水が入るのでこれを防ぐために用いられる。 規制基準適合性審査
原子力規制委員会が、2013年6月19日、福島第一原子力発電所事故の教訓を踏まえた新しい規制基準を決定し、7月8日に施行。テロ対策などを盛り込んだ「シビアアクシデント(過酷事故)対策」、既存設備の安全対策を強化・追設する「設計基準」、活断層調査の強化や津波防護対策を定めた「地震・津波対策」の3つに大別される。また、規制基準には、最新の安全対策を義務づけるバックフィット制度が導入され、既存の原子力発電所も対象となる。 クリアランスレベル
放射性物質としての特殊性を考慮する必要のないレベルをいう。 クリプトン(Kr)
原子番号36。原子量83.80の元素で希ガスの一種。核分裂生成物として原子炉内で生成されるクリプトン85は、半減期が10.8年 グレイ(Gy)
ある物が、放射線を受けて吸収したエネルギー量(吸収線量)を表す単位。1グレイは、1キログラムあたり1ジュールのエネルギーを吸収することに等しい。 蛍光ガラス線量計
銀活性リン酸塩ガラスを放射線で照射すると自由電子と正孔が生じ、これらが銀原子に捕獲され蛍光中心が生成される。これを紫外線で刺激するとオレンジ色の蛍光を放出し、この蛍光量から線量を測定する。蛍光中心は、極めて安定で長期間保存されるため、何回でも再読できる。個人被ばく線量計及び環境線量測定用線量計として使用されている。 軽水炉
アメリカで開発された発電用原子炉で、原子炉圧力容器の中に普通の水(重水と区別するために軽水と呼ぶ)を満たし、その中に低濃縮ウランの燃料を装荷している。軽水が減速材と冷却材をかねるタイプである。沸騰水型(BWR)と加圧水型(PWR)の2種類がある。発電用原子炉としてアメリカ、フランスをはじめ世界でもっとも多く使われている原子炉である。 原子力委員会、原子力安全委員会
原子力委員会は、1956年に総理府に設置され、原子力開発・利用について、企画、審議、決定する権限を有している。一方、原子力安全委員会は、1978年に原子力基本法等の一部改正が施行され、原子力委員会が有していた機能のうち、安全確保及び安全規制に関する事項について、企画、審議及び決定する機関として設置された。
内閣総理大臣が、原子力委員会及び原子力安全委員会の決定した事項について報告を受けたときは、これを十分尊重しなければならず、また、必要であれば、内閣総理大臣を通じて、関係行政機関の長に勧告することができる。2001年、内閣府に移設
原子力安全委員会は、平成24年9月19日に廃止されました。
原子力規制委員会・原子力規制庁
平成23年3月11日に発生した東京電力福島原子力発電所事故の教訓に学び、二度とこのような事故を起こさないために、我が国の原子力規制組織に対する国内外の信頼回復を図り、国民の安全を最優先に、原子力の安全管理を立て直し、真の安全文化を確立すべく、平成24年9月19日に設置された。原子力規制委員会は国家行政組織法第3条に基づく独立性の高い組織であり、環境省の外局として置かれている。原子力規制庁は、原子力規制委員会の事務局として置かれている。 原子力3原則
原子力基本法第2条に日本の原子力研究、開発、利用は「民主的な運営の下に自主的にこれを行うものとし、その成果を公開し……」と規定されている。この民主・自主・公開の3つの原則を原子力3原則という。 原子力の日
10月26日。1956年の10月26日に、日本は国際原子力機関の憲章に署名。また、1963年の同日に、日本原子力研究所・動力試験炉(JPDR : Japan Power Demonstration Reactor)が、日本最初の原子力発電に成功。これにちなんで1964年に設けられた記念日。 原子炉圧力容器
原子力発電所の核燃料、減速材および1次冷却材など原子炉の主要構成材料を収納し、その中で核分裂を発生させる容器 原子炉格納容器
原子炉と冷却系など主要な原子力設備を収容する建造物で、気密、耐圧性を備えている。原子炉事故で放射性物質が原子炉の外に流出した際にこれを閉じ込めて外部に放出しない目的で設置される。 原子炉の自己制御性
原子炉の出力が増すと反応度が減少し、それに伴って自然に原子炉の出力が減少する性質。燃料要素や減速材、冷却材が負の温度係数を持っている原子炉では、出力増加に伴う温度上昇があると、自ら出力を抑えようとする性質を持っている。 原子炉等規制法
「核原料物質、核燃料物質および原子炉の規制に関する法律」(昭和32年制定)の略称。原子力基本法の精神に基づいて、核燃料物質の使用条件を定めるとともに、核燃料の製錬、加工、再処理、原子炉の設置、運転などに対する必要な規制を行い、原子力災害を防止することを目的としている。 減速材
中性子の速度を核分裂に適した速度に減速させるためのもの。燃料の性質や炉の目的に応じて、普通の水(軽水)、重水、黒鉛などが使用される。 高温ガス炉(HTGR : High Temperature Gas-Cooled Reactor)
ガス冷却炉のうち、特にヘリウムを冷却材として用い、原子炉出口ガス温度を750℃以上の高温にして、熱効率の向上を図った原子炉。化学工業など多目的利用の可能性がある。 高経年化
原子力発電所の運転開始後の経過年数が長くなること。 公開ヒアリング
原子力発電所の設置許可の過程で地元住民の疑問や意見を聴取して、安全審査の上に反映させることを目的としたヒアリング 高速増殖炉(FBR : Fast Breeder Reactor)
高速中性子により核分裂連鎖反応を起こさせる原子炉を高速炉と呼ぶが、高速増殖炉とは高速炉において、炉心で消費した燃料以上に新しい燃料を作り出すしくみの原子炉。
炉心は、通常プルトニウム239とウラン238で構成される。プルトニウム239の核分裂によって発生した中性子の一部はウラン238に吸収され、新しい燃料であるプルトニウム239が発生する。
高レベル放射性廃棄物
使用済燃料の再処理で分離された核分裂生成物や超ウラン元素などアクチノイド元素を含むきわめて放射能レベルの高い廃棄物である。 国際原子力機関(IAEA : International Atomic Energy Agency)
国際連合の専門機関の1つで、1957年7月29日設立。その目的は原子力を世界の平和・保健・繁栄のため貢献させること。核分裂性物質の監視と原子力の平和利用に関する開発の推進を行う。 五重の壁
ペレット、被覆管、原子炉圧力容器、原子炉格納容器、原子炉建屋といった放射性物質に対する5つの防壁のこと。 国際放射線防護委員会(ICRP : International Commission on Radiological Protection)
放射線防護の国際的基準を勧告することを目的とする国際委員会で、世界の医学・保健・衛生等の権威者を集めて構成されている。わが国の法律もこの委員会の勧告に沿って線量限度等を定めている。 コバルト60(60Co)
原子番号27。人工放射性核種の一つ。半減期5.3年。ベータ(β)崩壊に伴いガンマ(γ)線を出す。γ線源として医療機関でも使用されている。 混合酸化物燃料(MOX燃料 : mixed-oxide fuel)
二酸化ウラン(UO2)と二酸化プルトニウム(PuO2)の混合酸化物(MOX)を成形・加工して作る燃料。高速増殖炉や新型転換炉、軽水炉の燃料に用いられる。
サーベイメータ
携帯用の放射線検出測定装置で、アルファ(α)線、ベータ(β)線、ガンマ(γ)線、中性子線用のサーベイメータがある。方式としては電離箱式、GM管式、比例計数管式、シンチレーション式、半導体式などがある。 再循環ポンプ
沸騰水型原子炉の1次冷却水をジェットポンプに送り、強制的に循環させるもので、可変速モータによって流量の制御ができ、原子炉出力を流量に比例して変えられる。従来の炉型では通常大型が2台設置されているが、改良沸騰水型(ABWR)では原子炉圧力容器の内部に10台のインターナルポンプが設置されるようになった。 再処理(燃料の再処理)
原子炉で使用した燃料の中には、燃え残りのウランや新しくできたプルトニウムなど燃料として再び使用できるものと、放射能をもった核分裂生成物などが含まれている。これを使用できるものとできないものに分ける作業を再処理という。これは、再処理工場で行われ、硝酸に燃料を溶かし有機溶媒を利用する、ピユーレックス法(溶媒抽出法)が主に採用されている。 ジェットポンプ
ノズルから噴出する高圧の冷却水を駆動源とするタイプのポンプ。ノズルから噴出する高圧水が、周囲の冷却水を吸い込み、炉心に冷却水を供給する。 自然放射線
宇宙線およびウラン、ラジウム、トリチウム、カリウムのような自然界にある放射性元素から出る放射線をいう。その量は地質により放射性元素の量や種類が異なるため、地域によって差がある。たとえば関西の花崗岩の多い地域と、自然界にある放射性元素の含有量の少ない関東ローム層の地域とでは、自然放射線の強さが異なる。また、宇宙線の強さは高度によって変わり、上空にあがるほど強くなる。 実効線量
人体の一部に受けた放射線をすべて足し合わせて、全身で受けたらどのくらいになるか換算した値。例えば、肺だけ10ミリシーベルト受ければ、全身が均等に1.2ミリシーベルト受けたのに等しく、この値が実効線量となる。 シビアアクシデント
一般に、設計基準事象を大幅に超える事象であって、安全設計の評価上想定された手段では適切な炉心の冷却または制御ができない状態であり、その結果、炉心の重大な損傷に至る事象をいう。 シーベルト(Sv)
人体が放射線を受けた時、その影響の度合いを測るものさしとして使われる単位。シーベルトは、スウェーデンの放射線学者R.M. シーベルトの名からとったもの 遮へい
放射線をさえぎり、外部への放射線の影響を少なくすること。遮へい材としては多くの場合、水、コンクリート、鉛、鉄等が用いられる。 シュラウド
沸騰水型原子炉の炉内において、燃料集合体や制御棒などを収容し、冷却水の流れを整えるために設置されているステンレス製の円筒状構造物 使用済燃料
原子炉を運転すると、核分裂するウラン235が減少するので、一定期間(1年前後)ごとに原子炉を停止して新しい燃料に取り替えなければならない。通常、原子炉内の燃料は1回に3分の1~4分の1くらい取り替えるが、このようにして取り出された燃料を使用済燃料という。この使用済燃料は、発電所内の専用プールに貯蔵冷却して放射能を弱めたのち、専用の輸送容器(キャスク)に入れて再処理工場へ送られる。 重水
水の分子を構成する水素原子が重水素(D)に置きかわったもので、D2O、DHOの2種類がある。中性子を減速する能力がすぐれ、中性子の吸収が少ないので原子炉の減速材として使われる。 重水炉
減速材として重水を用いる原子炉の総称。この炉型は、カナダで主として開発されてきた。重水は軽水に比べ中性子吸収が非常に少ないので、天然ウランを燃料として用いることができる。 新型転換炉(ATR : Advanced Thermal Reactor)
核分裂反応で放出された高速中性子を重水によって効率よく熱中性子に減速することにより、中性子効率が軽水炉に比べて良く、天然ウランやプルトニウムを有効に利用するように設計された発電用原子炉。サイクル機構が所有する新型転換炉「ふげん」は微濃縮ウランと混合酸化物燃料を使用し、重水を減速材として軽水で燃料を冷却する型式のもので、サイクル機構が、我国独自に開発を進めてきたもの 人工放射線
X線発生装置、加速器などからつくり出される放射線で、診断用のX線はその代表的な人工放射線である。このほか原子炉や加速器で人為的につくられた放射性物質から出る放射線も人工放射線である。 制御棒
原子炉の出力(核分裂の割合)を調節する役目をもつもので、中性子をよく吸収する物質(ホウ素、ハフニウム等)でつくられている。核分裂は中性子がウランにぶつかって起こるので、制御棒の出し入れによって炉内の中性子の数を変え核分裂の割合を調節する。 生体遮へい壁
作業員の放射線による放射線障害を防止するという観点から、強い放射線をさえぎるために機器、配管などの回りを覆うように設けられたコンクリートや鉛などの壁 セイフティーカルチャー
チェルノブイル原子力発電所の事故後に、IAEAの国際原子力安全諮問委員会(INSAG)が提唱したもので、原子力開発に携わるすべての個人、組織が常に安全に関する意義を最優先にもって行動することを求めた思想 セシウム137(137Cs)
原子番号55。半減期約30年で、ベータ線とガンマ線を放出する。核分裂生成物の一つで原水爆実験によるフォールアウト(放射性降下物)中にも含まれる。 セシウム134(134Cs)
原子番号55。半減期約2年で、ベータ線とガンマ線を放出する。核分裂生成物の一つ。 設備利用率
発電所が、ある期間において実際に作り出した電力量と、その期間休まず定格出力で運転したと仮定したときに得られる電力量(定格電気出力とその期間の時間との掛け算)との百分率比
年間の設備利用率(%)=〔実際の年間の発電電力量(kWh)〕÷〔定格電気出力(W)×365日×24時間〕×100
多重防護
原子力施設の安全対策を何段階にも構成し安全性を高めることをいう。原子力発電所では、第1段階として安全保護系によって異常の発生を防ぎ、第2段階として緊急停止(スクラム)等により事故の拡大を防ぎ、第3段階として非常用炉心冷却装置(ECCS)や、格納容器などにより事故の影響を最小限に止めるようにしている。深層防護と呼ぶこともある。 中性子源
中性子を発生する放射線源をいう。例えばラジウム226のようなα線を出すものとベリリウムを適当に混ぜた、ラジウム−ベリリウム中性子源、カリホルニウム中性子源等が知られている。原子炉では、核分裂連鎖反応を最初に開始させるために、原子炉の中にあらかじめ入れておく。 中性子照射脆化
材料が長期間中性子の照射を受けることにより脆くなる現象 低レベル放射性廃棄物
原子力発電所等の運転や解体撤去によって発生する放射性物質の濃度の低い廃棄物。現在、低レベル放射性廃棄物埋設センター(青森県六ヶ所村)で埋設事業が実施されている。 定格熱出力一定運転
原子炉で発生する熱(原子炉熱出力)を原子炉設置許可で認められた最大値である定格熱出力に保ったまま運転する方法。同じ熱出力では、冬のように海水温度が低い時期のほうが発電効率が良くなり、発生する電気が増加する。 同位体
同じ元素であるが、その原子核中の中性子の数が異なるものをいう(陽子の数は同じ)。同位体のうち、放射線をだす性質のものを放射性同位体という。 ドップラー効果
原子炉において、燃料の温度上昇に伴い中性子の共鳴吸収量が多くなることをいう。このため燃料温度が上昇すると、原子炉の反応度は低下する。共鳴吸収とは、原子核があるエネルギーの中性子を異常に吸収する現象をいう。軽水炉では、ウラン238の共鳴吸収に由来するドップラー効果が、原子炉の自己制御性に大きく寄与している。 トリチウム
原子核が陽子1個、中性子2個からなる水素の放射性同位体をいう。軽水や重水の中性子照射などにより生成される。半減期は12.3年である。
内部被ばく
放射性物質を含む気体や固体を体内にとり入れたときに、身体の内部から放射線を受けることをいう。人は普通飲食物(カリウム40などの自然の放射性物質を含む)から、年間約0.29ミリシーベルトの内部被ばくを受けている。 ナトリウム
ナトリウムは、工業製品などの原料として使われている。水銀のように銀白色に輝く金属で、97.8℃で液体となる(沸点は882.9℃)。酸素と水と反応しやすいという欠点もあるが、よく熱を伝える。比熱が水の3分の1であるなどの優れた性質をもつ。また、中性子をあまり吸収せず、スピードを落とさせないことから、高速増殖炉の冷却材に採用されている。 二酸化ウラン(UO2
ウランの酸化物。緑褐色の粉末。軽水炉の燃料として、二酸化ウランの粉末をプレスで成形し、高温で焼き固めたペレットが使われている。 人・シーベルト(マン・シーベルト)
たくさんの人が受けた放射線の量を1人の人が受けた線量として換算した値(→シーベルト) 熱蛍光(ルミネッセンス)線量計(TLD : Thermoluminescent dosimeter)
放射線を受けた物質が加熱したときに発光する(熱ルミネッセンス)ことを利用した放射線測定器。受けた放射線の量に比例して光を出し、何度でも利用できるため、原子力発電所などの放射線管理に広く利用されている。
発電所の設備容量
発電設備の能力。発電所がどのくらいの電気をつくることができるかを示す。W(ワット)、kW(キロワット)などで表す。 発電所廃棄物
原子炉施設の運転、解体に伴って発生する廃棄物。それに含まれる主要な放射性核種は、60Coのような短半減期のβγ核種である。放射性核種濃度に応じて、現行の政令が定める濃度を超えるもの(高βγ低レベル放射性廃棄物)、現行の政令濃度上限値以下のもの(低レベル放射性廃棄物)、放射性核種の濃度が極めて低いもの(極低レベル放射性廃棄物)、クリアランスレベル以下のものに区分される。 半減期
放射性物質の原子は放射線を出すことにより安定した状態へと変化する。放射性物質の量は時間の経過とともに減少する。この放射性物質の量が半分になるまでの時間を半減期という。 反射材
中性子を吸収することが少なく、よく反射する物質を原子炉の炉心の外側におき、炉心から漏れでてくる中性子を炉心に反射して送り返す物質をいう。これにより炉心を小さく設計することができる。水、ベリリウムなどが使われる。 被覆管(燃料被覆管)
核燃料の酸化や腐蝕を保護し、また核分裂生成物などが外部に漏れることを防ぐため、燃料を覆うもの。被覆材としてはジルコニウム合金であるジルカロイなどが使用される。 非常用炉心冷却装置(ECCS : Emergency Core Cooling System)
原子炉内の水が減少したり、太いパイプが破れて急速に水がなくなったりした時に、炉心を冷却するために設けられている装置。原子炉の中へ水を送り込んだり、燃料棒に直接水をかけて冷やしたりして、熱くなる燃料棒の破損を防止する。 疲労
材料に力が繰り返し加わって劣化する現象 フィルタ付きベント設備
核燃料が損傷する過酷事故が発生した場合に、格納容器内の圧力や温度を下げ、また、大気中への放射性物質の放出を抑えるための緊急の排気設備。 フェイル・セーフ・システム(fail-safe-system)
装置の一部が故障しても、必ず装置が安全側に作動するような設計上の考え方や装置。原子炉の安全設計の基本的考え方の一つである。たとえば、原子炉の制御回路が停電で停止した場合、原子炉は緊急停止するようになっている。 復水器
タービンで仕事を終えた蒸気を水に戻す機器で、蒸気を水にして体積を減らすことにより高い真空をつくり、蒸気の流れをよくしてタービンの効率を高くする働きをするもの。 腐食
化学反応や水の流れにより材料の厚さが減る現象 沸騰水型原子炉(BWR : boiling water reactor)
炉内で冷却水を沸騰させる炉型式で、発生した蒸気をそのままタービンに送る直接サイクル型となっている。 プルサーマル(プルトニウムの軽水炉利用)
ウランとプルトニウムの混合酸化物(MOX)を燃料として、従来のウラン燃料と同様に軽水炉で利用すること。現在、プルトニウムの最も確実な利用方法とされている。 プルトニウム(Pu)
天然には存在しない人工の放射性元素。ウラン238が中性子を吸収してウラン239になり、ベータ線を放出してネプツニウム239に、再びベータ線を放出してプルトニウム239になる。このプルトニウム239は核分裂をする性質をもっているので、高速増殖炉などの燃料に用いられる。 ベクレル(Bq)
放射性物質の放射能を表す単位。1ベクレルは、1秒間に1個の原子が崩壊し、放射能を放出することを表す。 ベータ(β)線
原子核から飛び出す電子で放射線の一種。物質を透過する力はアルファ(α)線より大きいが、ガンマ(γ)線より小さい。 保安規定
原子炉や核燃料施設(燃料加工施設など)の設置者が施設の運転に当たって安全対策、保守、点検、作業者の被ばく防止等の保安について遵守すべきことを定めた社内規定。原子炉等規制法に基づいて、設置者が規制当局に届け出て認可を得ることが義務づけられている。 崩壊熱
放射性物質が壊変(崩壊)したときに発生する熱 放射性同位体(放射性同位元素)
同位体のうち放射線を出す性質を持つもの。ラジウムのように天然に存在するものと、人工的につくりだされるものがある。一般にラジオアイソトープ(RI)とよばれている。 放射性廃棄物(→発電所廃棄物、→高レベル放射性廃棄物) 放射能
原子核が別の原子核に壊変し、アルファ(α)線、ベータ(β)線あるいはガンマ(γ)線などの放射線を出す能力をいい、強さをベクレル(Bq)で表わす。放射能をもっている物質を放射性物質と呼ぶ。 放射線
高いエネルギーの電磁波、すなわち波長のきわめて短い電磁波と高速で飛ぶ粒子の総称 放射線業務従事者の線量限度
管理区域に立ち入って作業する人、あるいは放射線を発生する機器を使用、実験、管理したりする人を放射線業務従事者という。放射線業務従事者には、個人被ばくモニタリング、定められた期間ごとの健康診断、被ばく線量の登録などが義務づけられている。線量限度は、5年間に100ミリシーベルトかつ1年間で50ミリシーベルト。また、女性に対しては、3ヶ月5ミリシーベルト ポケット線量計
ポケットに入る程度に小さくした積算型の線量計。中心電極をあらかじめ充電しておき、放射線を受けることにより電極から放電が起きる。これによる電位の減少の度合いを読みとって、受けた放射線の量を知ることができる。
MOX燃料(→混合酸化物燃料) モニタリング
放射線を定期的に、または連続的に測定監視することをモニタリングという。原子力発電所の周辺において野外の放射線監視を行うための施設として、モニタリングステーションおよびモニタリングポストがある。 モニタリングポスト
原子力発電所や再処理工場などの敷地周辺に設置される放射線監視場所。ここでは空気中の放射性物質濃度、放射線量率、積算線量などが測定される。
ヨウ素131(131I)
原子番号53。ヨウ素の放射性同位体で核分裂生成物の一つ。半減期約8日
臨界
ウラン235が核分裂すると、複数個の新しい中性子が飛び出し、この中性子が次の核分裂を起こす。このようにして連続的に核分裂が続いていくことを核分裂の連鎖反応というが、この連鎖反応が同じ割合で持続している状態を臨界という。原子力発電所では原子炉を臨界状態に保つことにより発電を行う。 冷却材
原子炉内で発生した熱を取り出すために使われるもので、軽水、ナトリウム、炭酸ガス、ヘリウムガスなどが使用される。軽水炉は、冷却材の軽水が減速材も兼ねる。 レーザー濃縮法
特定の波長(エネルギー)のレーザーを金属ウランや粉末ウランに当てると、プラス電荷を持つウランとなる。ウラン235とウラン238では、わずかではあるがこの波長に違いがある。この差を利用してウラン235とウラン238を分離し、ウラン235の濃度を上げる方法 劣化ウラン
ウラン235が含まれている割合が、天然ウランよりも小さいウランのことをいう。 六フッ化ウラン(UF6
ウランとフッ素の化合物。約57℃で気体となる。この形体でウラン濃縮(同位体分離)を行う。 炉心
原子炉において、核燃料を装荷し、核分裂が活発に行われる部分。核燃料と減速材からなり、その中を冷却材が通過する。 炉心スプレー
沸騰水型原子炉(BWR)における原子炉の事故時の安全防護装置の1つ。原子炉冷却材が流出して原子炉内の圧力が減少したときに、炉心上部から冷却に必要な水をスプレー状にして均一に散布する装置 炉内構造物
原子炉圧力容器内の炉心を構成する部材の総称。燃料集合体、制御棒などを直接に支持または拘束する構造物
WとWhの違い
W(ワット)は、電力の大きさを表す単位。一方、Wh(ワットアワー)は、どれだけの仕事をしたか、その仕事量(エネルギー量)をあわらす単位。1Wの電気器具を1時間利用すると1Whの電力消費量(仕事量)となる。